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スポーツ外傷・スポーツ障害

文責 柔道整復 創健堂 院長 榊原孝文

「スポーツ外傷」と「スポーツ障害」は、似ている言葉ですが違うことを意味します。

 

【スポーツ外傷】

スポーツの最中に生じる骨折・脱臼・捻挫・靭帯損傷・肉ばなれ等のいわゆる「ケガ」のことです。

負傷した時には炎症という反応が起こりますが、炎症の5兆候(5つの特徴的な症状)というものがあります。

1.腫脹(はれる)

2.発赤(赤みを帯びる)

3.熱感(赤みを帯びたところを中心に熱を帯びる)

4.疼痛(じっとしていても、或いは動かそうとすると痛む)

5.機能障害(正常に動かすことができない)

※炎症の5兆候は、ケガの時だけではなく手術を受けた時にも表れます。

これらの兆候は、筋肉や靭帯・骨・血管などの組織が損傷され、そこに分布する神経も傷つけられたり、刺激を受けることによって起こります。

【スポーツ障害】

継続的、或いは反復して、身体の一定部分に負荷がかかることにより起こる障害のことです。

 

使いすぎにより起こることが多いのですが、外傷をキッカケに、スポーツ障害に移行することもあります。

一例ですが、足首を負傷し、かばいながら日常生活やスポーツの練習を行っていたために、ふくらはぎに違和感や痛みを感じるようになり、その症状がなかなか改善しないというようなケースです。

【処置法】

【スポーツ外傷】の場合

負傷直後と一定期間が経過した後では、処置方法は違います。

 

負傷直後であれば『 RICE 』を行うことが基本です。

R:Rist(安静)

I:Ice(冷却)

C:Compression(圧迫)

E:Elevation(挙上)

 

これは損傷した部位にかかる負荷を軽減するとともに、炎症反応により引き起こされる疼痛や熱感といった不快な症状を軽減するための処置です。

 

R:Rist(安静)

文字通り、傷めたところに負荷をかけないようにすることです。負荷がかかれば腫れや痛みが強くなってしまします。

 

I:Ice(冷却)

氷を氷嚢やポリ袋に入れて使用することが簡便ですが、直接、肌に氷を長時間継続的に当ててしまうと凍傷になる恐れがあります。肌の上にタオルなどを当てた上から氷で冷やすようにしてください。

C:Compression(圧迫)

内出血や腫れを抑える目的で行いますが、けがの程度により腫れが強く出てくる場合があります。最初からあまりつよい圧迫を加えると、増えてきた腫れにより内圧が高まり、耐えられない痛みが出ることもあるので、圧迫の程度は加減しなければいけません。

E:Elevation(挙上)

負傷部位を心臓に近い高さで保持することで、腫れや痛みを軽減することができます。

包帯で患部を中心に周囲を含めて圧迫し、副子(固定する材料)を使用し固定するという「 R 」と「 C 」を併せた方法をとると、包帯の巻きなおしが簡便で患部の観察もでき、疼痛の増悪など症状の変化に応じて臨機応変に対応できます。

損傷を受けた当初は、血管が破れ出血することや、組織液と呼ばれる液性成分が滲み出てくることから腫れが増大してきます。それに伴い疼痛も強くなってくるので、その症状を軽減するために冷却するのは効果的です。

 

しかし、数日間経過して強い炎症が治まり、修復期に入ったにもかかわらず痛みや腫れ、熱感が残っているからといって冷却し続けると、血行不良から酸素や栄養分の供給・老廃物の回収が行われないため、逆に治癒を遅らせてしまうことになります。

 

冷却には、氷や冷却シートだけでなく消炎鎮痛剤(シップ薬)の使用もありますが、消炎鎮痛剤には血流を抑制する成分が含まれます。

 

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順調な修復を促すには、血流を良くすることが大切です。

 

組織の修復が行われる早い段階で、『血管新生』といって、毛細血管がどんどん作られるのです。

そこに血液が流れるので、外見上赤みを帯びて、触れば熱感があるのです。

 

これを邪魔してはいけませんよね。冷やさないようにしましょう!!

【スポーツ障害】の場合

スポーツ障害の場合も、炎症の程度により、短期間の冷却が有効な場合と、温めて血行促進をしなければいけない場合とがあります。

 

炎症が強いかどうかは専門家の判断が必要ですが、症状が現れたばかりで、比較的強い痛みを感じるようであれば、1~3日間は冷やして様子を見るべきでしょう。

 

しかし、症状が現れて間もないもので、違和感程度の軽いものであれば、血行を良くするようにしたほうが改善は早いと思います。

また、症状の程度にあまり変化なく継続しているようであれば、基本的には冷やさないように(消炎鎮痛剤は使用しないように)、血行改善を心掛けて下さい。

 

入浴は効果的です。

ここで知っておいて欲しい大切なことがあります。

 

症状の現れている部位が必ずしも悪いところではなく、別の部位に根本的な原因がある場合もあるということです。

 

私たちは、身体のどこにも異常を感じていない時と、どこかに何らかの異常を感じる時とでは、日常生活やスポーツをする中でとる姿勢や動作が違います。

 

片方の足を傷めたのであれば、そこに感じる痛みができるだけ少ないようにかばいながら歩くでしょうし、腰を傷めて背筋がまっすぐ伸ばせないのであれば、少し前かがみで、場合によっては左右どちらかに上体を傾けた姿勢で歩くようになります。

 

「肩が痛くて手を上に挙げるのがつらい」というピッチャーであれば、肘が下がった投球になるかもしれませんし、無理に上体を傾けて手を挙げようするかもしれません。

痛みその他の症状によって身体の使い方が変わると、筋肉や関節などへの負荷のかかり方も変わるので、もともと傷めたところとは違った部位に新たな症状が出てくることがあります。

 

また、不自然な姿勢をとることで脊柱(せきちゅう:背骨の柱)が歪んでしまい、痛み・しびれ・だるさ・関節の可動範囲が狭くなるなどの症状が出てきてしまうこともあるんです。

 

これもまたスポーツ障害なのですが、見落とされがちな原因ですね。

 

症状のある部位だけを温めたり冷やしたりマッサージしたりしても、原因を取り除かない限り良くなってはいきません。

 

背骨のずれがあるかどうかの判断は専門家に任せなければいけませんが、『上記のようなことがある』ということを知っていただきたいと思います。